なぜ決めた戦略が進まない?
『戦略が実行されない 会社』を徹底解説!

「経営会議で決めたことが、翌月になっても進んでいない」「新しい経営戦略を発表しても、社員はこれまでと同じ仕事を続けている」「幹部へ任せたはずなのに、社長が確認しなければ動かない」「営業、採用、商品開発、WEBなど複数の部署が関係すると、誰も全体を進めようとしない」「外部のコンサルタントから提案を受けても、実行する人がいない」。会社を成長させようとする経営者にとって、こうした問題は大きな悩みです。

経営者からすれば、会社の方向性は明確です。売上を伸ばすために新しい商品を作る。利益率を高めるために価格を見直す。新規顧客を増やすためにマーケティングを強化する。社員が自分で判断できるように幹部を育てる。業務効率を高めるためにAIやシステムを導入する。どれも会社の成長に必要なことです。

しかし、経営会議で決定し、担当者を決め、社員へ説明しても、思うように進まないことがあります。

例えば、「新規顧客を増やす」という戦略を決めたとします。営業部は営業活動を増やそうとしますが、商品内容が競合と差別化できていないため提案が難しい。商品担当者は改善が必要だと考えていますが、既存商品の対応で忙しい。WEB担当者はサイトを変更したいものの、掲載する商品情報が決まっていない。広告会社は広告を始めたいと考えていますが、予算の承認が下りていない。

それぞれの担当者が仕事をしていても、会社全体としては戦略が進んでいません。

そして、経営会議で社長が確認します。「新規顧客を増やす施策はどうなっている?」

すると、営業部は商品が決まっていないと言い、商品担当者は営業から具体的な要望が来ていないと言い、WEB担当者は原稿が届いていないと言い、広告会社は開始の指示を待っていると答えます。

最終的に社長が各担当者へ指示を出し、優先順位を決め、期限を設定し、進捗を確認することになります。

このような会社では、戦略を決めるのも社長、部署間を調整するのも社長、問題を解決するのも社長、実行を管理するのも社長です。

戦略が実行されない会社では、戦略そのものよりも、戦略を実行するための経営機能が不足している場合があります。

創業当初であれば、社長がすべてを管理する方法でも会社は動きます。社員が少なく、事業が一つであれば、社長の判断がそのまま社員の行動につながるからです。しかし、社員が増え、部署が増え、複数の事業が生まれ、外部パートナーも増えてくると状況は変わります。

社長がすべてを確認しなければ動かない経営では、会社が成長するほど社長の仕事が増えていきます。経営戦略を実行するために、社長自身が営業、採用、商品開発、WEB、財務、組織などの進捗を管理しなければならなくなります。

本来、社長が時間を使うべきなのは、会社の理念、未来、経営戦略、重要な投資判断、新規事業、重要人材の育成などです。しかし、決めた戦略が自然に実行されない会社では、社長の時間が確認、調整、催促、問題対応で埋まっていきます。

ここで重要なのは、社員へ「もっと主体的に動いてほしい」と求めるだけでは問題が解決しないことです。

社員が戦略を理解していても、何をすればよいか分からなければ動けません。担当者が決まっていても、判断する権限がなければ進められません。期限が決まっていても、既存業務が減らなければ後回しになります。KPIが設定されていても、数字を改善する具体的な施策がなければ成果は出ません。

つまり、戦略を実行できるかどうかは、社員の努力だけではなく、会社がどのような実行構造を持っているかによって大きく変わります。

戦略が実行される会社では、経営方針が具体的な施策へ分解され、それぞれに責任者、期限、権限、予算、KPIが設定されています。さらに、部署を横断する課題を管理する人がいて、問題が起きた時には必要な判断が行われます。会議は単なる報告の場ではなく、戦略を前へ進めるための意思決定の場として機能しています。

反対に、戦略が実行されない会社では、経営方針は発表されても、具体的な仕事へ落とし込まれていません。担当者がいても全体の責任者がいない。KPIがあっても行動とつながっていない。会議は行われていても、問題が解決されない。この状態では、どれだけ良い戦略を作っても実行は進みません。

そして、もう一つ重要なのが、戦略の実行を社内だけで完結させる必要はないということです。

商品開発、営業、WEB、広告、採用、教育、財務、AI活用など、会社の成長にはさまざまな専門性が必要です。すべてを社員だけで実行しようとすれば、人材不足や経験不足によって施策が止まることがあります。

そこで、社員、AI、システム、専門家、外部パートナーを組み合わせ、戦略ごとに最適な実行チームを作るという考え方が重要になります。ただし、外部企業を増やすだけでは社長の管理対象が増えるため、全体を管理する仕組みまで設計する必要があります。

目指すべきなのは、社長が指示し続けることで戦略が進む会社ではなく、社長が方向性を決めれば、組織と仕組みが戦略を実行する会社です。

この記事では、戦略が実行されない会社によくある誤解、組織の中で戦略が止まる構造的な原因、その状態を放置した場合の経営リスク、戦略が実行される会社へ変える具体的な方法を詳しく解説します。

さらに、5方良し経営の視点から、会社の利益だけではなく、従業員の成長、顧客への価値、社会との関係、次世代へ残す経営基盤まで考え、戦略を継続的に実行できる会社づくりについても紹介します。

戦略が実行されない原因を社員の意識だけに求めるのではなく、決めたことが実行される会社の仕組みを作ることが重要です。

目次

よくある誤解

1.経営戦略を明確にすれば社員は自然に動く

経営者が考える戦略と、社員が実際に行う仕事には大きな距離があります。例えば「既存顧客の売上を伸ばす」という戦略を決めても、社員は何から始めればよいのか分からない場合があります。顧客単価を上げるのか、購入頻度を増やすのか、新商品を提案するのか、継続契約を増やすのかによって具体的な仕事は異なります。

経営者からすれば方向性は明確でも、社員からすれば複数の選択肢がある状態です。さらに、社員には既存の仕事があるため、新しい戦略が示されただけでは優先順位も変わりません。

戦略を伝えることと、戦略を実行できる状態を作ることは別です。経営戦略を実行するには、具体的な施策、担当者、期限、必要な経営資源まで整理する必要があります。

2.社員の意識を変えれば実行力が高まる

戦略が進まない時、「社員に当事者意識がない」「もっと主体的に行動してほしい」と考える経営者もいます。しかし、社員が主体的に動けない原因が、会社の仕組みにある場合もあります。

例えば、新しい施策を進めようとしても予算を使うには社長の承認が必要で、他部署へ協力を依頼しても優先してもらえず、通常業務の目標も変わらない状況では、担当者だけの努力で進めることは難しくなります。

社員へ責任感を求めるのであれば、その責任を果たせる権限、時間、予算、人員も必要です。社員の主体性は、精神論だけではなく、自分で考えて判断し、行動できる環境によって育ちます。

3.KPIを設定すれば戦略は実行される

経営戦略を実行するためにKPIを設定することは重要です。しかし、数字を設定するだけでは実行力は高まりません。

例えば、新規顧客獲得数を月20社と設定しても、営業先のリストがなく、商品が差別化されておらず、営業資料も整っていなければ、数字だけを追いかけても成果にはつながりません。

また、KPIが未達だった時に「来月は頑張ろう」で終わってしまえば、問題は改善されません。必要なのは、結果を生み出す行動まで分解することです。商談数が足りないのか、商談からの成約率が低いのか、そもそもターゲットが間違っているのかを確認し、具体的な改善へつなげます。

KPIは社員を管理するための数字ではなく、戦略が正しく実行されているかを判断するための指標です。

4.経営会議を増やせば戦略が進む

戦略が進まない会社ほど、会議を増やして管理を強化しようとすることがあります。しかし、会議の回数と戦略の実行力は必ずしも比例しません。

毎週会議を開催しても、各担当者が進捗を報告し、問題点を説明し、「引き続き対応します」で終了するのであれば、会議は単なる報告の場になっています。

重要なのは、何が問題で、どの判断が必要で、誰がいつまでに解決するのかを決めることです。順調に進んでいる施策よりも、止まっている施策の障害を取り除くことに時間を使う必要があります。

経営会議の目的は、戦略の進捗を聞くことではなく、戦略を前へ進めることです。

5.優秀な幹部へ任せれば戦略は進む

優秀な幹部がいれば、戦略実行の中心を担ってもらうことはできます。しかし、幹部個人の能力だけに依存した実行体制では、会社全体の仕組みは変わりません。

例えば、営業責任者が優秀でも、商品開発、採用、WEB、財務など複数部署にまたがる戦略を一人で進めることは難しい場合があります。また、幹部に任せたと言いながら、重要な判断をすべて社長が行っていれば、実質的には権限委譲ができていません。

幹部へ任せる場合は、役割、責任、権限、予算、他部署との連携方法まで設計する必要があります。優秀な人材を採用することだけではなく、優秀な人材が成果を出せる経営体制を作ることが重要です。

6.外部コンサルタントを入れれば実行できる

外部コンサルタントへ依頼すれば、経営課題の分析や戦略策定を進められる場合があります。しかし、優れた戦略が完成しても、それを実行する体制がなければ会社は変わりません。

また、営業コンサルタント、採用会社、WEB会社、広告会社などを個別に活用すると、それぞれの提案が部分最適になることもあります。営業会社は営業強化を提案し、WEB会社はサイト改善を提案し、採用会社は採用強化を提案する。しかし、会社全体として何を優先するべきかが整理されていなければ、社長がすべてを判断することになります。

外部活用で重要なのは、専門家を増やすことではありません。会社の経営戦略に沿って、社内外の人材を一つの実行チームとして機能させることです。

なぜうまくいかないのか

1.経営戦略が具体的な仕事まで分解されていない

戦略が実行されない会社では、経営戦略が大きな方針のまま止まっていることがあります。「売上を増やす」「利益率を改善する」「新規事業を立ち上げる」「採用を強化する」といった方向性は示されていても、実際に何をするのかが決まっていません。

例えば利益率を改善するのであれば、商品別の利益率を分析し、利益率の低い商品を見直し、価格改定を検討し、原価を削減し、高付加価値商品を開発するといった施策が考えられます。さらに、それぞれを具体的な仕事へ分解する必要があります。

価格改定であれば、現状価格の分析、競合調査、改定案の作成、顧客への説明方法、営業資料の修正、実施時期の決定などが必要です。

このように分解されていなければ、社員は「利益率を改善する」という目標を理解していても、明日から何をすればよいのか分かりません。

戦略が実行されない最初の原因は、経営方針が実際の仕事へ変換されていないことです。

2.実行責任者と判断権限が曖昧になっている

戦略を具体的な施策へ分解しても、誰が最後まで責任を持つのかが決まっていなければ進みません。

特に複数部署が関係する施策では、担当者が複数いても全体の責任者がいない状態が起こりやすくなります。営業部は営業活動を進め、商品担当者は商品開発を進め、WEB担当者はサイトを制作していても、全体として一つの戦略が実行されているとは限りません。

また、責任者を決めても、必要な判断をすべて社長へ確認しなければならないのであれば、実行速度は上がりません。

どこまで責任者が判断できるのか。どの金額まで予算を使えるのか。どの条件になったら経営陣へ確認するのか。他部署へどのように協力を依頼するのか。これらを明確にする必要があります。

責任者の名前を決めるだけではなく、実行するための権限まで渡すことが重要です。

3.既存業務と新しい戦略が競合している

戦略が実行されない会社では、新しい仕事を追加することはあっても、既存業務を減らすことができていない場合があります。

例えば、営業責任者へ新規事業の立ち上げを任せても、既存事業の売上目標や顧客対応がそのまま残っていれば、新規事業に使える時間は限られます。

採用担当者へ採用ブランディングの強化を任せても、日々の応募者対応や面接調整に追われていれば、新しい施策は後回しになります。

経営者からすれば新しい戦略が最優先でも、社員からすれば通常業務も同じように重要です。優先順位が明確でなければ、期限が近い仕事から処理することになります。

そのため、新しい戦略を実行する時は、何を追加するかだけではなく、何をやめるか、何を減らすか、何を他の人へ移すかまで決める必要があります。

経営戦略を実行するには、仕事の追加ではなく、会社全体の経営資源の再配分が必要です。

4.部署ごとに目標と評価基準が異なっている

会社全体の戦略が明確でも、部署ごとの目標や評価基準が異なっていれば、社員の行動が一致しないことがあります。

例えば、会社としては利益率を高めたいのに、営業部が売上金額だけで評価されていれば、値引きしてでも売上を増やそうとする可能性があります。一方、商品部門が開発コストの削減だけを評価されていれば、高付加価値商品の開発に必要な投資を避けるかもしれません。

それぞれの部署は自分たちの目標を達成しようとしているのに、会社全体の戦略は進まないという状態です。

この問題を解決するには、会社全体の戦略と部署ごとの目標をつなげる必要があります。売上、利益、顧客満足、継続率、商品開発、業務効率など、戦略に必要な指標を整理し、部署間で矛盾が起きないようにします。

さらに、評価制度も戦略と連動させる必要があります。社員に求める行動と、実際に評価する行動が一致していなければ、戦略は組織へ定着しません。

5.経営会議が問題解決ではなく報告の場になっている

戦略実行には進捗管理が必要ですが、会議が報告中心になると問題が解決されません。

例えば、新商品の開発が一か月遅れているとします。担当者が「開発が遅れています」と報告し、社長が「早く進めてください」と指示するだけでは、翌月も同じ報告になる可能性があります。

重要なのは、なぜ遅れているのかを明確にすることです。

人員が不足しているのか。商品コンセプトが決まっていないのか。外注先から回答が来ないのか。社長の判断待ちなのか。そもそも計画に無理があるのか。

原因によって解決方法は異なります。

経営会議では、進捗を確認するだけではなく、問題の原因を整理し、必要な意思決定を行い、次の行動まで決める必要があります。

実行管理の本質は、遅れていることを指摘することではなく、遅れの原因を取り除くことです。

6.戦略を推進する機能が社長個人へ集中している

戦略が実行されない会社に共通する大きな問題が、戦略を最後まで進める役割が社長へ集中していることです。

社長が経営戦略を考え、社員へ説明し、担当者を決め、会議を開催し、進捗を確認し、問題があれば調整する。この状態では、戦略の実行力が社長個人の時間と能力に依存します。

社員が増え、事業が増え、戦略テーマが増えれば、社長が管理する対象も増えていきます。

そこで必要になるのが、戦略を実行までつなげる経営機能です。

経営課題を整理し、優先順位を決め、具体的な施策へ分解し、担当者を設定し、進捗を管理し、部署間の調整を行い、必要な判断を経営陣へ上げる。この機能は、経営企画部門、社長室、CEOオフィス、プロジェクト管理担当など、会社の規模や体制に応じてさまざまな形で設計できます。

重要なのは部署名ではありません。社長が毎回動かなくても、戦略が実行まで進む機能を会社が持っていることです。


戦略が実行されない会社では、戦略の具体化不足、責任者と権限の曖昧さ、既存業務との競合、部署間の目標の不一致、経営会議の形骸化、社長への推進機能の集中などが起こっています。

これらは別々の問題に見えますが、共通しているのは、戦略を実行へつなげる会社の仕組みが不足していることです。

戦略が実行されない問題を解決するには、社員の行動を変える前に、社員が行動できる経営構造を作る必要があります。

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放置するとどうなるか

1.経営方針が形骸化し社員からの信頼を失う

経営戦略を発表しても実行されない状態が続くと、社員は新しい方針を真剣に受け止めなくなる可能性があります。

「去年も同じことを言っていた」「今回も途中で終わるだろう」「結局、日々の仕事をしていればよい」といった意識が生まれると、経営方針を発表しても組織が動きにくくなります。

特に問題なのは、社員が経営陣の言葉と実際の行動の違いを感じることです。経営者が重要だと説明している戦略に予算が付かず、責任者も決まらず、進捗確認も行われなければ、社員は本当に重要な仕事だとは感じにくくなります。

戦略が実行されない状態を放置すると、個別の施策だけではなく、経営方針そのものへの信頼が弱くなります。

2.重要な経営課題が先送りされ続ける

日常業務には期限があります。顧客への納品、営業活動、請求、給与計算、採用面接などは、予定通り進めなければ問題が発生します。

一方、新規事業、組織改革、商品開発、DX、幹部育成、事業承継などは、今日実行しなくても会社がすぐに止まるわけではありません。

そのため、戦略を実行する仕組みがない会社では、重要な経営課題ほど後回しになります。

しかし、新規事業を一年先送りすれば、その間に市場環境が変化する可能性があります。幹部育成を先送りすれば、会社が成長しても任せられる人材が育ちません。

今日の仕事は進んでいても、未来の会社を作る仕事が止まっている状態になってしまいます。

3.社長が会社の成長限界になる

戦略が進まなければ、最後は社長が動くことになります。

社長が担当者へ連絡し、会議を設定し、外注先へ確認し、問題を解決し、次の指示を出す。この方法でも一定の成果は出せるかもしれません。

しかし、会社が成長するほど戦略テーマは増えます。既存事業の改善、新規事業、採用、組織、財務、AI、マーケティング、提携など、社長が管理する対象が増え続ければ、いずれ時間が足りなくなります。

その結果、会社の成長速度が社長一人の処理能力によって制限されます。

社長が動かなければ戦略が進まない会社では、社長自身が会社の成長限界になってしまいます。

4.社員が育たず組織の主体性が弱くなる

社長が毎回指示を出して問題を解決していると、社員は自分で判断する機会を失いやすくなります。

何か問題が起きた時に「社長へ確認しよう」と考えることが習慣になれば、責任者や幹部が育ちにくくなります。

一方で、社員が自分で進めようとしても、権限がなく、他部署の協力も得られない状況では主体性を発揮できません。

結果として、社長は「社員が自分で考えない」と感じ、社員は「最終的には社長が決める」と考える悪循環が生まれます。

この状態が続くと、会社が成長しても社長の代わりに戦略を進められる人材が育ちません。

5.投資した時間と費用が成果につながらなくなる

経営戦略を作るためには時間と費用がかかります。市場調査、競合分析、経営会議、外部コンサルタント、システム導入、採用活動などへ投資する場合もあります。

しかし、戦略が実行されなければ、その投資が期待した成果へつながりません。

例えば、コンサルタントへ依頼して新規事業の計画を作っても、実行する担当者がいなければ事業は始まりません。新しいシステムを導入しても、業務フローが変わらなければ十分に活用されません。

さらに、戦略が途中で止まると、途中まで使った時間や費用も回収しにくくなります。

戦略が実行されないことは、成長機会を失うだけではなく、経営資源を十分に活用できない問題でもあります。

6.次の経営者へ引き継げない会社になる

戦略の実行が社長個人へ依存している会社では、事業承継の際にも問題が生まれます。

社長が何を優先するのか、どのように判断するのか、誰へ仕事を任せるのか、どの数字を見るのかが仕組みとして残っていなければ、次の経営者が同じように会社を動かせるとは限りません。

会社を長く続けるためには、社長の経験や感覚だけに依存せず、経営方針、判断基準、実行管理、幹部育成などを会社の仕組みとして残す必要があります。

戦略を実行できる仕組みを作ることは、現在の会社を成長させるだけでなく、次世代へ経営を引き継ぐためにも重要です。


戦略が実行されない状態を放置すると、経営方針が形骸化し、重要な課題が先送りされ、社長の仕事が増え、社員の主体性が弱くなります。さらに、投資した時間や費用が成果につながらず、次世代へ経営を引き継ぐことも難しくなります。

戦略が実行されないことは、単なる計画の遅れではなく、会社の成長力と将来性に関わる経営課題です。

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実践ステップ

1.会社の未来から経営戦略の優先順位を決める

最初に行うべきなのは、現在の会社が抱えている課題をすべて実行しようとすることではありません。

三年後、五年後にどのような会社を作りたいのかを明確にし、その未来を実現するために何を優先するべきかを決めます。

例えば、売上を増やすことが最優先なのか、利益率を改善することが最優先なのか、幹部を育てて社長依存を減らすことが最優先なのかによって、必要な戦略は変わります。

新規事業、商品開発、営業強化、採用、DXなど、やるべきことが多い会社ほど優先順位が重要です。

経営資源には限りがあります。すべてを同時に進めようとすれば、社員も予算も分散し、どの戦略も中途半端になる可能性があります。

そのため、戦略を決める時は、何を実行するかだけではなく、何を今は実行しないかまで決める必要があります。

戦略の実行力を高める第一歩は、やることを増やすのではなく、本当に重要なことへ経営資源を集中させることです。

2.経営戦略を具体的な施策と仕事へ分解する

次に、優先順位の高い戦略を具体的な施策へ分解します。

例えば「既存顧客の売上を伸ばす」という戦略であれば、顧客単価の向上、購入頻度の向上、継続率の改善、新商品の提案、紹介制度の導入などへ分解できます。

さらに顧客単価の向上であれば、顧客分析、商品設計、価格設定、営業資料の作成、営業研修、テスト販売、結果分析などへ分けます。

ここまで分解することで、社員が実際に何をすればよいのかが明確になります。

そして、各施策について、誰が、何を、いつまでに行い、どの状態になれば完了なのかを決めます。

「営業資料を改善する」ではなく、「既存顧客向けの新商品提案資料を今月末までに完成させ、翌月から営業担当者が提案できる状態にする」というように、完了条件まで具体化します。

戦略を実行できる会社では、経営方針が具体的な仕事までつながっています。

3.実行責任者と権限を明確にする

施策を具体化したら、実行責任者を決めます。

重要なのは、単に担当者を決めることではありません。全体の進捗を管理し、問題を発見し、必要な調整を行い、最後まで実行を進める責任者を明確にすることです。

複数部署が関係する戦略であれば、部署ごとの担当者とは別に、全体の責任者を置くことも有効です。

さらに、責任者へ必要な権限を渡します。

予算をどこまで使えるのか。外部企業へどこまで依頼できるのか。他部署へどのように協力を求められるのか。どの判断は社長へ確認する必要があるのか。

これらを明確にすることで、責任者が自分で判断しやすくなります。

ただし、権限を渡すことは経営責任を放棄することではありません。重要な投資や会社全体へ影響する判断は社長が行い、日常的な実行判断は責任者へ任せるという役割分担が必要です。

仕事を任せるだけでなく、判断する権限まで渡すことで戦略の実行速度が高まります。

4.KPIと評価制度を経営戦略へ連動させる

戦略を実行するためには、何をもって成果とするのかを明確にする必要があります。

例えば、新規顧客の獲得を目指す場合、最終的な売上だけでなく、問い合わせ数、商談数、提案数、成約率、顧客単価などを確認します。

そして、どの数字を改善するためにどの施策を実行するのかを整理します。

さらに重要なのが評価制度との連動です。

会社として利益率を高めたいのであれば、売上だけではなく利益への貢献も評価する必要があります。顧客満足を高めたいのであれば、短期的な売上だけではなく、継続率や顧客対応の品質も評価することが考えられます。

社員が日々の仕事で何を優先するかは、会社から何を求められ、何を評価されるかによって影響を受けます。

そのため、経営戦略と評価制度が矛盾していないかを確認することが重要です。

経営戦略、部署目標、個人目標、評価制度が一つにつながることで、社員の日常業務と会社の方向性が一致しやすくなります。

5.経営会議を戦略実行の管理機能へ変える

戦略を実行するためには、定期的に進捗を確認し、必要な判断を行う仕組みが必要です。

ただし、すべての担当者が細かく状況を報告する会議ではなく、戦略を前へ進める会議へ変えることが重要です。

例えば、各施策について、予定通り進んでいるのか、遅れているのか、何が障害になっているのか、経営陣の判断が必要なのかを整理します。

順調に進んでいる施策については簡潔に確認し、遅れている施策や重要な判断が必要なテーマへ時間を使います。

また、会議で決定したことは、担当者、期限、完了条件を明確にして記録します。次回の会議では、その決定事項が実行されたかを確認します。

この流れを繰り返すことで、経営会議が単なる情報共有ではなく、実行管理の仕組みとして機能するようになります。

会議で決めたことが実行されるまで管理することが、戦略実行力を高める重要なポイントです。

6.社内外を組み合わせた実行体制を作る

最後に重要なのが、戦略を実行するための人と機能をそろえることです。

会社の成長には、営業、商品開発、マーケティング、採用、教育、財務、システム、AIなどさまざまな専門性が必要です。しかし、すべての専門人材を社内で採用することが最適とは限りません。

そこで、社員が担う仕事、AIやシステムへ任せる仕事、外部専門家へ依頼する仕事を整理します。

例えば、経営戦略の方向性と重要な判断は社長が担い、日常的な進捗管理は社内責任者が担い、WEB制作は外部企業へ任せ、採用は専門会社と連携するという形です。

ただし、外部企業を増やすだけでは、社長がそれぞれを管理しなければならなくなります。

そのため、全体の実行責任者を決め、社内外の関係者を一つのチームとして管理する仕組みが必要です。

会社の規模によっては、経営企画担当、社長室、CEOオフィス機能、外部の経営支援チームなどを活用する方法もあります。

社長がすべてを管理するのではなく、人と仕組みが戦略を実行する体制を作ることが最終的な目標です。

7.一般的解決策との違い

一般的な戦略実行の改善では、KPIの設定、PDCA、会議改善、社員の意識改革、目標管理などが中心になります。これらは重要ですが、個別に導入するだけでは会社全体の実行力は高まりません。

例えば、KPIを設定しても担当者がいなければ進みません。責任者を決めても権限がなければ動けません。会議を増やしても問題を解決する仕組みがなければ成果にはつながりません。

本質的な違いは、個別の管理手法を導入するのではなく、理念、経営戦略、具体的な施策、実行責任者、権限、KPI、評価、会議、社内外の実行体制まで一つにつなげることです。

さらに、社長が毎回進捗確認をしなくても戦略が実行される状態を目指します。


戦略が実行される会社へ変えるには、会社の未来から優先順位を決め、経営戦略を具体的な施策へ分解し、責任者と権限を明確にする必要があります。

さらに、KPIと評価制度を連動させ、経営会議を実行管理の場へ変え、社内外の人材を組み合わせた実行体制を作ります。

戦略実行力とは、社長や社員の頑張りだけではなく、決めたことが実行される会社の仕組みそのものです。

5方良し経営で再設計

1.《会社良し》
戦略が利益と成長につながる会社を作る

会社良しでは、経営戦略を実行すること自体を目的にするのではなく、実行した結果として会社が強くなることを目指します。

例えば、売上拡大の戦略であっても、利益が残らず、社員の負担が増え、社長の管理業務が増えるだけであれば、長期的に持続することは難しくなります。

そのため、売上、利益、キャッシュ、組織、人材、商品力などを総合的に考え、会社の経営基盤が強くなる戦略を選択します。

また、戦略を実行するための仕組みが会社に残ることも重要です。新規事業を立ち上げる過程で商品開発の仕組みが整い、営業強化を進める過程で営業管理が整い、組織改革を進める過程で幹部が育つ。このように、一つの戦略を実行することで会社全体の能力が高まる状態を目指します。

会社良しとは、戦略の成果だけでなく、戦略を実行できる会社そのものを作ることです。

2.《従業員良し》
戦略実行を社員の成長につなげる

従業員良しでは、戦略を実行するために社員へ仕事を増やすだけではなく、社員自身が成長できる環境を作ります。

新規事業や業務改善のプロジェクトは、社員が新しい経験を積み、判断力や問題解決力を高める機会になります。

そのためには、単に作業を指示するのではなく、戦略の目的を伝え、必要な権限を渡し、自分で考えて実行できる環境を整えることが重要です。

また、新しい戦略を進めるのであれば、既存業務の見直しも必要です。社員へ仕事を追加するだけでは負担が増え、成長の機会ではなく不満の原因になる可能性があります。

教育制度や評価制度も連動させ、挑戦したこと、改善したこと、周囲と協力したことなどを適切に評価します。

会社の戦略が進むほど社員も成長し、社員が成長するほど会社の実行力が高まる関係を作ることが重要です。

3.《顧客良し》
顧客価値を高める戦略を実行する

顧客良しでは、経営戦略の中心にお客様への価値を置きます。

売上目標だけを追いかけると、会社が売りたい商品を売ることが目的になりやすくなります。しかし、本来の商品やサービスは、お客様の問題を解決し、より良い状態を実現するためにあります。

例えば、顧客単価を上げる戦略であれば、単純な値上げだけではなく、商品やサービスの付加価値を高めることが重要です。継続率を高めるのであれば、契約を続けてもらう仕組みだけでなく、お客様が継続的に価値を感じられるサービスを作る必要があります。

また、戦略を実行する過程で顧客の声を集め、商品やサービスを改善する仕組みも重要です。

お客様への価値が高まることで会社の利益も増える戦略を実行することが、長期的な成長につながります。

4.《世間良し》
取引先や社会との信頼関係を強くする

世間良しでは、自社の利益だけではなく、取引先、外部パートナー、地域、業界などとの関係も考えます。

会社の戦略を実行するためには、多くの関係者の協力が必要です。仕入先、販売代理店、業務委託先、専門家などとの信頼関係がなければ、会社だけで実行できることには限界があります。

例えば、自社の利益を増やすために取引先へ一方的な負担を求めれば、短期的には利益が増えても長期的な関係を損なう可能性があります。

反対に、自社の成長によって取引先にも新しい仕事が生まれ、顧客にも価値が提供され、社会にも良い影響が広がる関係を作ることができれば、協力を得やすい経営基盤になります。

自社だけが成果を得る戦略ではなく、関係者にも価値が生まれる戦略を実行することが重要です。

5.《次世代良し》
戦略を実行できる経営体制を未来へ残す

次世代良しでは、現在の社長が優秀であることだけに依存せず、次の経営者や幹部も戦略を実行できる会社を目指します。

社長がすべての判断を行い、進捗を管理し、問題を解決している会社では、社長が交代した時に同じように経営できるとは限りません。

そのため、経営方針、判断基準、実行計画、KPI、会議、権限、評価などを仕組みとして残す必要があります。

また、戦略実行を通じて次世代の経営者や幹部を育てることも重要です。責任者としてプロジェクトを任せ、判断する経験を積み、成果と失敗から学ぶことで、将来の経営を担う人材が育ちます。

次世代良しとは、社長が変わっても戦略を考え、実行し、成長し続けられる会社を残すことです。


5方良し経営で戦略実行を考えると、単に売上や利益を増やすことだけが目的ではなくなります。

会社の経営基盤が強くなり、従業員が成長し、顧客への価値が高まり、取引先や社会との信頼関係が深まり、その仕組みが次世代へ受け継がれる。この五つをつなげて考えます。

戦略が実行される会社とは、会社だけが成果を得るのではなく、関係する人たちとともに成長し続けられる会社です。


「経営戦略はあるのに実行できない」「やるべきことは分かっているが、進める人がいない」「社員へ任せても結局社長が管理することになる」。このような悩みを抱えている場合、さらに新しい戦略を作ることだけが解決策ではありません。

必要なのは、社長が考えていることを具体的な施策へ変換し、実際に実行できる経営体制を作ることです。

「社長の分身」では、まず社長の本音を整理します。

本当はどのような会社を作りたいのか。どこまで成長させたいのか。何を大切にしたいのか。社長自身はどのような働き方をしたいのか。現在の会社で何が一番の問題だと感じているのか。

こうした社長の本音を整理し、会社の理想を明確にします。

次に、理想と現状の差を整理します。

商品力が不足しているのか。営業力が不足しているのか。採用ができていないのか。社員が育っていないのか。管理の仕組みがないのか。利益構造に問題があるのか。

経営課題を整理した上で、原理原則に沿って優先順位を決め、具体的な施策へ落とし込みます。

そして重要なのが、実行体制です。

どれだけ良い施策を考えても、実行する人がいなければ会社は変わりません。

そこで、社内の社員だけではなく、AI、システム、専門家、外部パートナーなどを組み合わせ、必要な仕事を実行できる体制を整理します。

例えば、商品開発には商品設計の専門家、営業強化には営業支援会社、採用には採用支援会社、WEB改善には制作会社、財務には専門家など、経営課題に応じた人材や企業を組み合わせることが考えられます。

ただし、外部企業を増やすだけでは、社長がそれぞれを管理する仕事が増えてしまいます。

そのため、誰が全体を管理し、誰が何を実行し、どのように進捗を確認するのかまで含めた丸投げチーム設計が重要になります。

目指すのは、社長がすべての施策を管理することではありません。

社長が会社の方向性と重要な意思決定を担い、具体的な実行は人と仕組みが進める会社です。

その状態を作ることで、社長は目の前の進捗確認や調整に追われるのではなく、理念、会社の未来、新規事業、重要な投資、人材育成、重要な提携など、社長にしかできない仕事へ時間を使いやすくなります。

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社長の本音を出して理想を明確にし、経営の原理原則からやるべきことを整理し、実行するための丸投げチーム設計まで一緒に考えます。

まとめ

戦略が実行されない会社では、経営戦略そのものが間違っているとは限りません。

経営者が会社の未来を考え、必要な戦略を決めていても、それを実行する仕組みがなければ会社は動きません。

戦略が具体的な施策へ分解されていない。実行責任者が決まっていない。権限が渡されていない。既存業務が優先される。部署ごとの目標が一致していない。経営会議が報告の場になっている。こうした問題が重なることで、戦略は止まってしまいます。

そして最終的に社長が進捗を確認し、問題を解決し、担当者へ指示を出すことになります。

この状態では、会社が成長するほど社長の仕事も増えていきます。

だからこそ、戦略が実行されない問題を社員個人の問題ではなく、会社全体の経営構造の問題として捉えることが重要です。

まず会社の未来を明確にし、優先順位の高い戦略へ経営資源を集中させます。次に、戦略を具体的な施策へ分解し、責任者、期限、完了条件、権限、KPIを決めます。

さらに、評価制度を経営戦略へ連動させ、経営会議を意思決定と問題解決の場へ変えます。

そして、社内人材だけで不足する機能は、AI、システム、専門家、外部パートナーなどを組み合わせ、会社全体として実行できる体制を作ります。

5方良し経営の視点では、戦略の成果が会社の利益だけでなく、従業員の成長、顧客への価値、社会との関係、次世代へ残す経営基盤につながっているかまで考えます。

戦略が実行される会社とは、社長が何度も指示する会社ではありません。社長が方向性を決めれば、人と仕組みが動き、成果が生まれ、改善が続く会社です。

経営戦略を作ることから、経営戦略を実行できる会社を作ることへ。その転換が、会社の持続的な成長につながっていきます。

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この記事を書いた人

テクノロジー時代だからこそ、5方良し(会社、顧客、従業員、世間、次世代良し)の経営思考が重要になると考え、広めていくために役に立つコンテンツを投稿し、セミナーを実施しております。

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