
「新規事業のアイデアはあるのに、自分が動かなければ進まない」「既存事業の責任者はいるが、新しい事業をゼロから任せられる人はいない」「事業計画は作ったものの、商品、営業、採用、WEB、実務を横断して動かせる人がいない」「優秀な事業責任者を採用したいが、採用に半年以上かかりそうだ」「幹部候補はいるものの、いきなり一事業の売上と利益を任せるのは不安だ」。このような悩みを持つ中小企業は少なくありません。
特に会社が次の成長段階へ進もうとすると、社長一人では複数事業を同時に見切れなくなります。創業時は社長自身が事業責任者です。商品を考え、顧客へ営業し、価格を決め、広告を確認し、社員を採用し、数字を見る。会社が一事業だけで社員数も少なければ、この形でも十分に回ります。しかし、既存事業が成長し、新規事業が増え、顧客や社員も増えてくると、社長が一つひとつの事業を直接管理することは難しくなります。ここで必要になるのが事業責任者です。
事業責任者とは、単なるプロジェクト担当者ではありません。一般的には、一つの事業について売上、利益、商品、顧客、営業、組織、実行まで幅広く見る役割を担います。営業だけ強くても事業は伸びません。商品が弱ければ売れません。売れても利益が残らなければ経営として成立しません。顧客が増えても実務体制が追いつかなければ品質が落ちます。人材が不足すれば成長が止まります。つまり事業責任者には、一つの事業を小さな会社のように捉え、全体を動かす力が求められます。問題は、このレベルの人材を簡単には採用できないことです。事業戦略を考えられる。商品を理解できる。営業数字を見られる。組織を動かせる。顧客を理解できる。財務感覚がある。問題が起きても自分で解決できる。
さらに社長の考え方を理解しながら、自分自身でも判断できる。このような人材を正社員としてすぐ採用できる会社は限られています。その一方で、新規事業や第二の柱づくりにはタイミングがあります。採用できるまで一年待っている間に市場環境が変わるかもしれません。競合が先行するかもしれません。せっかくの事業アイデアが社長の頭の中にあるだけで終わる可能性もあります。そこで選択肢になるのが「外部の事業責任者」です。ただし、外部事業責任者へ「この事業を全部お願いします」と渡せば成功するわけではありません。事業の目的は何か。どの顧客へ何を提供するのか。どの売上まで目指すのか。どの利益率を守るのか。何人採用してよいのか。どこまで予算を使えるのか。価格変更は誰が決めるのか。撤退判断は誰がするのか。ここが曖昧なままでは、外部人材も判断できません。
また、外部人材に依存しすぎると、その人が離れた瞬間に事業が止まる危険もあります。だからこそ重要なのは、単純に事業責任者を外注することではありません。外部事業責任者を活用する本質は、社長が持っている事業経営機能を一時的に外部人材へ補ってもらいながら、商品、営業、実務、数字、組織を一つの事業として回せる仕組みを会社に作ることです。
この記事では、外部事業責任者についてよくある誤解、事業責任者を入れてもうまくいかない構造、放置した場合の成長リスク、外部人材へ事業を任せる具体的な方法、そして最終的に社内へ事業責任者を育てる方法まで解説します。目指すのは、外から優秀な人を一人連れてくることではありません。社長が事業の方向を決めれば、事業責任者とチームが売上、利益、顧客価値まで自律的に作れる会社へ変えることです。
よくある誤解
1.事業責任者は営業責任者と同じである
売上を伸ばすことは事業責任者の重要な役割ですが、営業責任者と同じではありません。営業責任者は営業組織、商談、成約率、売上などを中心に見ることが多い一方、事業責任者は商品、価格、顧客、マーケティング、営業、提供体制、人材、利益まで事業全体を見る必要があります。売上が増えても粗利益が出ないなら問題です。受注しても納品できないなら事業として成立しません。事業責任者の役割は売上を作ることだけではなく、売上と利益と顧客価値が継続する事業そのものを作ることです。
2.外部事業責任者はコンサルタントと同じである
コンサルタントは分析、戦略、改善提案などに強みがあります。一方、外部事業責任者を置く場合には、提案後の実行まで役割に含めることが重要です。商品を変えるなら商品担当を動かす。営業改善なら営業担当とKPIを作る。WEBが必要なら制作会社と連携する。採用が必要なら採用担当と人数、時期、要件を決める。つまり「こうすればよい」と提案するだけではなく、「誰が、いつまでに、何をするか」まで動かします。
3.新規事業だけ外部へ丸投げすればよい
外部人材へ実行を任せることはできますが、会社としてなぜその事業を行うのかという目的まで外部へ丸投げしてはいけません。既存事業との関係、会社の理念、顧客との関係、将来の会社像などは経営者自身が決める必要があります。外部事業責任者には、その目的を実現する方法を任せます。
4.優秀な人を採用できない会社だけが外部を使う
外部人材は採用の代用品だけではありません。例えば新規事業の立ち上げ期だけ、海外進出の準備期間だけ、事業再建の半年間だけといった使い方もできます。必要な期間だけ経験者を入れ、事業が安定してから正社員へ引き継ぐ方法もあります。外部経営人材は、恒久的な人員不足対策というより、成長段階に応じて不足する経営能力を補う選択肢として考える方が適切です。
5.事業責任者には何でも自由に決めてもらうべきである
責任を持たせる以上、一定の権限は必要です。しかし、すべて自由に決めてもらう必要はありません。価格変更、採用人数、広告予算、外注、値引きなどについて、どこまで事業責任者が判断し、どこから社長承認になるのかを決めます。重要なのは「任せるか任せないか」の二択ではなく、権限範囲を具体的に設計することです。
6.外部人材なら社内政治に影響されないので簡単に進められる
外部だからこそ客観的に見られる強みはあります。しかし、実際に事業を動かすには社員の協力が必要です。営業、人事、経理、システムなどと連携しなければなりません。役割説明が不足すると「なぜ外の人から指示されるのか」という反発も起きます。外部事業責任者が成功するかどうかは、社内の理解と権限設計にも左右されます。
7.事業責任者本人が全部できなければならない
事業責任者は万能な実務担当者ではありません。WEB制作、広告運用、営業、契約書、採用などを一人で全部できる必要はありません。むしろ重要なのは、事業目標から逆算して何の専門性が必要かを判断し、社内外の人材を集めて成果へつなぐことです。
なぜうまくいかないのか
1.事業の目的が曖昧である
「新しい売上を作りたい」「第二の柱が欲しい」だけでは、事業責任者は判断できません。なぜこの事業をやるのか。既存顧客へ提供するのか、新規顧客を狙うのか。利益を作る事業なのか、将来の市場を取りにいく事業なのか。目的が違えば判断も変わります。
2.目標売上だけ決まっている
「一年で1億円売ろう」と決めても、粗利、営業利益、顧客数、単価、継続率が決まっていない会社があります。売上を増やすために広告費や人件費を大量投入し、結果として利益が残らない可能性があります。事業責任者には売上だけではなく、事業全体の経済性を見せる必要があります。
3.ターゲット顧客が決まっていない
「あらゆる企業へ売れる商品」は、営業現場では誰にも刺さらないことがあります。どの顧客の、どんな課題を、どんな価値で解決するのかを明確にしなければ、事業責任者も商品、マーケティング、営業を設計できません。
4.社長と事業責任者の判断範囲が重なっている
社長が事業責任者を置いたにもかかわらず、価格、営業資料、広告文、採用面接まですべて細かく確認すると、事業責任者は自分で判断しなくなります。一方、完全に放置すれば会社全体とのズレが生まれます。事業を任せるためには、何を事業責任者が決め、何を社長が決めるかという意思決定境界が必要です。
5.既存部署との連携がない
新規事業だからといって別会社のように動けるとは限りません。経理、人事、営業、マーケティング、システムなど既存部門の協力が必要です。そこを調整せず「外部責任者に任せました」と発表しても、必要な社内リソースを使えません。
6.権限がない
事業責任者という肩書でも、広告費1万円を使うたび社長確認、業務委託先を変えるにも社長確認では、実質的には責任者ではありません。外部人材であっても、成果責任を持たせるなら一定の判断権限が必要です。
7.KPIが多すぎる
問い合わせ数、商談数、成約率、売上、利益、顧客満足など、指標を増やしすぎると何を優先すべきか分からなくなります。事業フェーズによって最重要指標は違います。立ち上げ期なら仮説検証や初期顧客獲得、成長期なら売上やLTV、安定期なら利益率や生産性など、段階に応じて変える必要があります。
8.事業責任者が実務担当者化する
資料を作り、営業し、SNSを更新し、顧客対応し、採用面接もする。立ち上げ時には手を動かす必要がありますが、それが続くと事業全体を見る時間がなくなります。事業責任者はプレイヤーでありながら、徐々に経営者視点へ移る必要があります。
9.失敗の許容範囲がない
新規事業では、最初からすべて正解することは難しいでしょう。しかし一つの施策が失敗するたび社長から細かく介入されれば、責任者は挑戦しなくなります。どの予算までならテストできるか、どの数字まで悪化したら停止するかを先に決める必要があります。
10.撤退基準がない
事業を始める基準はあっても、やめる基準がない会社は少なくありません。その結果「ここまで投資したから」という理由だけで赤字事業を続けます。一定期間で売上、利益、顧客反応などが基準へ達しない場合には、改善、縮小、撤退を判断します。
11.外部責任者への依存が強すぎる
社内の誰も数字を理解しておらず、顧客情報も判断基準も外部事業責任者だけが持っている状態は危険です。その人が契約終了すれば事業が止まります。外部活用と同時に社内へ事業ノウハウを残す必要があります。
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放置するとどうなるか
1.社長が複数事業の責任者を兼任する
事業が一つ増えるたび、社長の管理対象も増えます。売上確認、営業会議、人材相談、顧客対応などが事業ごとに発生します。二事業、三事業と増えるほど社長の時間が分散し、どの事業にも十分な時間を使えなくなります。
2.新規事業がいつまでも準備中になる
社長案件は緊急業務に負けやすくなります。「来月やろう」が半年続くこともあります。市場機会があるうちに検証できず、競合へ先行される可能性があります。
3.既存事業まで弱くなる
新規事業へ社長が集中することで、既存事業への関与が急に減る場合があります。既存事業に自走体制がなければ、売上や組織が不安定になります。新規事業を作るために既存事業まで弱くなれば本末転倒です。
4.事業部長が育たない
社長が最後まで商品、営業、採用を決める状態では、事業責任者候補は経営判断の経験を積めません。「社長に聞けばいい」という文化が残ります。会社が大きくなっても経営人材の層が厚くなりません。
5.部門横断課題が止まる
事業は商品部だけ、営業部だけでは完成しません。WEB、集客、営業、採用、実務などが関係します。全体責任者がいなければ、それぞれが自分の担当部分だけ進め、全体は完成しません。
6.売上は増えても利益が残らない
営業責任者だけが事業を見ていると、売上を作ることが優先されます。しかし値引き、広告費、人件費、外注費を使いすぎれば利益は残りません。事業責任者にはPL視点が必要です。
7.事業の属人化が進む
社長と外部責任者だけが全体を理解している状態になると、社員は部分的な作業しか分かりません。人が変わるたびに立て直しが必要になります。
8.優秀な社員の成長機会を失う
外部責任者が何でも自分で行えば、社内人材は事業経営を学べません。本来なら次の責任者へ育つ社員が、いつまでも担当者のままになります。
9.社長が未来の経営へ進めない
最も大きな問題はここです。新しい事業を立ち上げるたびに社長自身が事業責任者を続ければ、事業が増えるほど社長は忙しくなります。会社が成長するほど社長の仕事が増える構造では、いつか社長の時間が会社の成長上限になります。
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実践ステップ
1.最初に「なぜこの事業をやるのか」を決める
売上を増やすためなのか、既存顧客のLTVを上げるためなのか、将来の主力事業を作るためなのか、既存事業の市場縮小へ備えるためなのか。事業目的を一文で定義します。目的が曖昧な状態で外部責任者を入れても、短期売上と長期投資のどちらを優先すればよいか判断できません。
2.社長の本音を整理する
社長自身がこの事業をどうしたいのかを明確にします。大きな会社にしたいのか、小さくても高収益を目指すのか。将来売却したいのか、既存事業とのシナジーを重視するのか。事業責任者へ戦略を任せる前に、社長が事業へ何を期待しているのかを言語化することが必要です。
3.理想の事業像を作る
1年後、3年後の売上、利益、顧客数、商品構成、社員数、組織、社長の関与度まで整理します。「年商3億円」「営業利益率20%」「責任者以下10名」など、可能な範囲で具体化します。
4.事業モデルを一枚へまとめる
顧客、課題、商品、価格、販売方法、集客、営業、提供方法、継続商品、収益構造を一枚で把握できるようにします。事業責任者が最初に理解するべき地図です。
5.事業責任者の成果責任を決める
売上だけなのか、利益までなのか。顧客満足まで見るのか。採用人数も含むのか。事業フェーズによって変わります。成熟事業なら利益責任まで持たせやすく、新規事業の初期なら顧客獲得や検証数を重視することもあります。
6.事業責任者の役割を6つに分ける
事業責任者には「戦略」「商品」「顧客・市場」「営業・集客」「実務・組織」「数字・管理」の6機能を持たせると整理しやすくなります。どこまで本人が直接担当し、どこから専門家を使うかを決めます。
7.社長と事業責任者の権限を分ける
例えば、一定金額以下の広告投資、キャンペーン、営業施策、外注は事業責任者判断。大幅な価格変更、年間予算変更、幹部採用、事業撤退などは社長判断とします。事業責任者へ仕事だけ渡し、判断権限を渡さなければ、本当の意味で事業は任せられません。
8.予算を渡す
責任を持たせるなら、使える経営資源も必要です。年間または四半期の広告費、人件費、外注費、開発費などを決めます。予算内なら一定範囲を自分で判断できるようにします。
9.最重要KPIを絞る
立ち上げ期なら顧客ヒアリング数、テスト販売数、受注数。成長期なら商談数、成約率、単価、LTV。安定期なら利益率、生産性、継続率などです。事業フェーズに応じてKPIを3から5程度へ絞ります。
10.週次で数字を見る
月末に売上を見てから対応するのでは遅いことがあります。問い合わせ、商談、成約、提供件数など先行指標を週単位で確認します。問題が起きたら早く改善できます。
11.事業責任者自身の仕事を棚卸しする
戦略を考える時間が必要なのに、一日の大半が営業や資料作成なら役割が崩れています。本人がやる仕事、社員へ渡す仕事、専門家へ渡す仕事、AIやシステムへ渡す仕事を分けます。
12.商品設計と営業をつなぐ
営業現場から「この価格では売りにくい」「この機能が必要」といった情報が出たとき、商品側へ反映する仕組みを作ります。事業責任者が商品と営業を別々に見ていると改善が遅れます。
13.WEB、集客、営業を一つの数字でつなぐ
広告会社が問い合わせ数だけ、営業が商談数だけを見る状態を避けます。流入、問い合わせ、商談、受注、単価、利益まで一つの流れで確認します。どこがボトルネックなのかを見つけます。
14.実務体制を先に考える
受注を増やしてから提供体制を考えると、現場が混乱します。顧客が2倍になったときに現在の人員や仕組みで提供できるのかを事前に確認します。必要ならマニュアル、システム、採用を整えます。
15.採用基準を事業戦略とつなぐ
事業責任者が「人が欲しい」と言ったらすぐ採用するのではなく、どの業務が不足しているのかを分解します。社員が必要なのか、業務委託でよいのか、AIで代替できるのかまで検討します。
16.経営会議と事業会議を分ける
細かな事業進捗まで経営会議で議論すると時間が足りません。事業会議ではKPI、現場課題、改善を確認し、経営会議では大型投資、重要人事、事業方針など社長判断が必要なものだけを扱います。
17.報告ルールを決める
毎日細かく報告すると外部責任者の自律性がなくなります。一方、全く報告がないとリスクがあります。週次で数字と課題、月次でPLと戦略、重大問題は即時報告というようにルールを決めます。
18.撤退基準を先に決める
例えば6か月以内に一定数の有料顧客が獲得できなければ再設計、12か月で一定売上に届かなければ撤退検討など、事前に基準を決めます。始める前に決めておけば、感情に左右されにくくなります。
19.外部事業責任者に一人ですべてやらせない
WEB、広告、法務、システムなど専門性が必要な部分は外部専門家へ任せます。事業責任者は、誰へ何を任せるかを判断し、全体を統合します。
20.課題ごとに丸投げチームを作る
例えば新規事業なら、商品設計、WEB制作、集客、営業、システム、法務、実務など必要な専門家を集めます。事業責任者が一社ずつ管理するのではなく、一つの目的とKPIを共有するチームにします。
21.社内の次期責任者候補を必ず入れる
外部人材だけで事業を完成させず、社内から一人以上をプロジェクトへ参加させます。顧客理解、数字、営業、会議、意思決定を一緒に経験させます。
22.判断理由を記録する
なぜこの価格にしたのか。なぜこの顧客を狙ったのか。なぜ広告を止めたのか。判断理由を残します。外部責任者本人しか分からない状態を避けます。
23.事業運営をマニュアル化する
日常業務だけではなく、月次数字の見方、会議方法、採用判断、価格変更の基準なども残します。経営そのものの再現性を高めます。
24.社内責任者へ段階的に権限を移す
最初は外部責任者が主導し、社内候補が補佐する。次に共同で判断し、最終的には社内責任者が判断し、外部人材が助言する状態へ変えます。
25.最終的に外部事業責任者がいなくても回る状態を作る
外部人材を永久に使うことが目的ではありません。事業が安定し、社内に経営できる人と仕組みが育ったら役割を縮小できます。もちろん高度な専門性が継続的に必要なら残しても構いません。外部事業責任者活用の完成形は、外部人材が事業を成功させることだけではありません。外部人材がいなくなっても、その事業が成長し続けられる経営能力を会社へ残すことです。
26.一般的解決策との違い
事業責任者がいない場合、一般的には正社員を採用する、既存社員を昇格させる、COOを置く、経営コンサルタントへ依頼する、事業開発会社へ支援してもらうといった方法があります。それぞれ有効ですが、解決する問題が違います。正社員採用は長期的な組織づくりに向いています。
しかし採用には時間がかかり、入社後に期待通り活躍するかは分かりません。既存社員の昇格は会社理解という強みがありますが、事業経営経験が不足している場合があります。COOは会社全体の執行を担う場合が多く、一事業だけの責任者とは範囲が異なることがあります。コンサルタントは分析や戦略に強い一方、実行責任まで持つとは限りません。外部事業責任者の特徴は、必要な事業へ、必要な期間、実行責任を持つ人材を入れられることです。ただし、単に外部人材へ事業を預けるだけでは不十分です。
本記事で考える外部事業責任者活用では、まず社長の本音、会社の理想、事業目的、原理原則を整理します。そのうえで成果、権限、予算、KPIを設定します。そして必要な専門家や社員をチーム化し、事業責任者が全体を統合します。さらに社内責任者候補を一緒に育てます。一般的な外部人材活用が「空いている責任者ポストを埋めること」だとすれば、本記事で考える外部事業責任者活用は「一つの事業が自律して成長できる経営システムを作ること」です。
外部事業責任者を活用する場合、最初に人を探すのではなく事業そのものを整理する必要があります。なぜこの事業を行うのか、誰へ何を提供するのか、どこまで売上と利益を目指すのかを決めます。そして事業責任者へ持たせる成果、役割、予算、権限、KPIを設定します。社長と責任者の意思決定境界を明確にし、商品、WEB、集客、営業、実務、採用、管理を一つの事業としてつなげます。必要な専門性は外部人材を組み合わせ、丸投げチームとして動かします。同時に社内候補を参加させ、判断理由や管理方法を会社へ残していきます。外部事業責任者を入れる目的は、社長の仕事を他人へ移すことではありません。社長しか事業を作れなかった会社を、複数の事業責任者が事業を作り育てられる会社へ変えることです。
5方良し経営で再設計
1.《会社良し》
一事業一責任者で成長できる会社へ
会社良しでは、社長一人がすべての事業を見る状態から、事業ごとに責任者が経営できる状態を目指します。社長が一つの事業へ使える時間には限界があります。しかし事業責任者が育てば、会社は複数の成長エンジンを持てます。社長は会社全体の方向、重要な投資、新しい事業、経営人材育成へ集中できます。事業責任者は担当事業について、顧客、商品、売上、利益、社員を見ます。外部人材を活用する場合も、単に社長の仕事を減らすのではなく、事業そのものに自律性を持たせます。会社良しの外部事業責任者活用とは、社長の代わりを一人増やすことではなく、会社が複数の事業を同時に成長させられる経営構造を作ることです。
2.《従業員良し》
社員に経営を学ぶ機会を作る
外部の経験豊富な人材がすべて決めれば、短期的には速く進むでしょう。しかし社員が作業だけを担当していては、次の責任者は育ちません。従業員良しでは、社員を事業会議へ参加させます。売上だけでなく利益も見せます。顧客の声も共有します。商品改善にも参加させます。徐々に小さな意思決定から任せ、経営者視点を身につけてもらいます。外部責任者の経験を社員教育へ変えることで、担当者からリーダー、リーダーから事業責任者へ成長できる道を作ります。
3.《顧客良し》
数字だけでなく顧客価値から事業を育てる
事業責任者に売上だけを求めると、短期的な値引きや過剰営業へ偏る可能性があります。顧客良しでは、「なぜ顧客が買ったのか」「どこに不満があるのか」「なぜ継続したのか」「なぜ紹介したのか」まで確認します。売上、利益と一緒に顧客満足、継続率、紹介率などを見ることで、長く選ばれる事業を作ります。顧客良しの事業責任者とは、数字を作る人ではなく、顧客へ提供する価値を高め、その結果として数字を作る人です。
4.《世間良し》
外部専門家を事業成長チームへ変える
WEB、広告、システム、採用、法務など、事業に必要な能力を全部正社員で持つ必要はありません。外部には多くの専門家がいます。しかし、一社ずつ別々に依頼すると全体がつながりません。広告会社は問い合わせ、WEB会社はサイト、採用会社は応募者だけを見る状態になりやすくなります。事業責任者が事業目的とKPIを共有し、一つのチームとして動かすことで専門性を掛け合わせられます。単純な発注関係ではなく、互いの強みを使って一つの事業を育てる共創関係へ変えていきます。
5.《次世代良し》
事業経営ノウハウを会社へ残す
新しい事業を立ち上げる経験は、会社にとって大きな財産です。どの市場を選んだのか。どうやって顧客ニーズを検証したのか。どんな価格が受け入れられたのか。どの営業方法が有効だったのか。どの失敗から何を学んだのか。それが外部事業責任者本人の頭の中だけにあれば、次の事業ではまたゼロから始めることになります。判断、数字、会議、商品改善、営業設計などを記録し、会社の経営資産へ変えます。次世代良しの外部事業責任者活用とは、一つの事業を成功させて終わるのではなく、「次の事業を自分たちで作れる会社」を残すことです。
5方良し経営から外部事業責任者を見ると、単なる人材不足対策ではないことが分かります。会社には複数事業を成長させる経営力が生まれ、社員には事業経営を学ぶ機会ができます。顧客にはより良い商品やサービスが届き、社外の専門家とは一つのチームとして価値を作れます。そして外部責任者が持つ事業経営ノウハウを会社へ残せば、次世代の新規事業にも活かせます。5方良し経営における事業責任者とは、自分の事業の売上だけを作る人ではありません。会社、社員、顧客、社会、次世代へ価値が循環する一つの事業を経営する人です。

「新規事業を始めたいが責任者がいない」「既存事業を任せられる幹部がいない」「事業責任者候補を採用できない」「営業部長はいるが、商品や利益まで見られる人がいない」。このような状態になると、優秀な事業責任者を一人探せば解決するように見えます。しかし、本当に問題なのは人材一人の不足だけでしょうか。仮に優秀な事業責任者を外部から入れても、会社の理念、事業目的、判断基準、権限、数字が整理されていなければ、その人も社長へ確認し続けることになります。
反対に、全部任せてしまえば会社の方向から外れる可能性があります。社長の分身では、最初に誰を採用するか、誰へ外注するかから考えません。まず社長の本音を出します。どんな会社を作りたいのか。どんな事業を持ちたいのか。なぜ新規事業が必要なのか。3年後、5年後に会社の売上構成をどうしたいのか。社長自身はどの事業へ関わりたいのか。次に理想を作ります。売上、利益、社員、顧客、商品、組織、事業構成まで具体化します。そして原理原則を整理します。どんな顧客を大切にするのか。どんな商品なら売るのか。どこまで利益を重視するのか。社員へどんな働き方を求めるのか。どんな事業はやらないのか。この原理原則が共有されれば、事業責任者自身が判断できる範囲が増えます。
その後、会社基盤について、理念設計、評価設計、教育設計、採用設計、管理設計を整理します。さらに事業成長について、商品設計、WEB設計、集客設計、営業設計、実務設計、アフターフォロー設計まで確認します。事業全体を見たうえで、どこが現在のボトルネックなのかを決めます。そして実行者を配置します。社長が行う仕事。事業責任者へ任せる仕事。社員が行う仕事。外部専門家へ任せる仕事。AIやシステムへ任せる仕事です。例えば新規事業であれば、外部事業責任者一人へすべてを背負わせる必要はありません。事業責任者が全体を持ち、商品設計、WEB、集客、営業、システム、法務など必要な専門家を組み合わせます。これが丸投げチームです。
ただし、丸投げとは社長が何も考えないことではありません。社長が理想、目的、原理原則、成果基準を示し、それ以降の具体的な方法については事業責任者と専門家チームが考え、実行し、改善し、成果まで持っていく状態です。社長の分身とは、社長と同じ人を一人作ることではありません。社長が持っている事業判断、商品知識、顧客理解、営業ノウハウ、経営判断を言語化し、事業責任者、社員、専門家、AI、仕組みへ分散することで、社長が一つひとつの事業を直接管理しなくても成長できる会社を作ることです。
そして外部事業責任者を活用する場合も、その人だけへ依存しません。社内から次の責任者候補を一緒に参加させます。会議のやり方、数字の見方、顧客の考え方、商品改善、採用判断まで共有します。最初は外部責任者が主導する。次に社内人材と共同で動かす。最後は社内事業責任者が主導し、外部人材は必要なときだけ支援する。そこまでできれば、会社は一つ上の段階へ進めます。新しい事業を立ち上げるたびに社長自身が責任者になる会社ではなく、事業ごとに責任者が育ち、必要な専門家を組み合わせ、自律的に成果を作れる会社になります。
一度、社長の分身にご相談ください。年商1~100億まで対応。
どんな悩みも無料で相談できます。
社長の本音を出して、理想、原理原則、丸投げチーム設計まで整理します。
外部事業責任者とは、単に事業計画を作るコンサルタントでも、営業だけを担当する責任者でもありません。一つの事業について、目的、顧客、商品、売上、利益、営業、実務、組織まで横断し、成果へ向けて動かす役割です。会社が一事業のうちは、社長自身がこの役割を兼任できます。
しかし事業が二つ、三つと増えれば、社長一人ですべてを直接管理することは難しくなります。そこで事業責任者が必要になります。問題は、十分な経営経験を持つ事業責任者をすぐ採用できるとは限らないことです。その場合、外部人材を活用する選択肢があります。ただし、「新規事業を全部任せます」と丸投げするだけではうまくいきません。最初に、なぜこの事業を行うのかを決めます。どの顧客へ、どんな価値を提供し、どれだけの売上と利益を目指すのか。そのうえで、外部事業責任者に持たせる成果責任、予算、権限、KPIを決めます。
さらに、商品、WEB、集客、営業、実務、採用、管理を一つにつなげます。必要な専門性は、一人の事業責任者へすべて求めません。WEBはWEBの専門家、法務は法律の専門家、システムはITの専門家を使い、事業責任者が全体を統合します。
そして社長には重要な方向性と重大な意思決定だけを上げる状態を作ります。同時に、社内の次期事業責任者候補を参加させます。数字の見方、顧客理解、商品改善、営業、採用、会議、意思決定を学ばせます。判断理由や事業運営方法も記録します。外部人材の経験を、会社の経営資産へ変えていきます。最終的に目指したいのは、優秀な外部責任者がいなければ事業が止まる会社ではありません。事業ごとに責任者が存在し、自ら商品、顧客、売上、利益、組織を考え、必要な専門家を動かしながら成長できる会社です。
その状態になれば、社長は各事業の日常管理から離れられます。既存事業については事業責任者へ任せる。社長自身は、次の事業、新しい市場、提携、幹部育成、3年後、5年後の会社を考える。事業が増えるほど社長が忙しくなる会社ではなく、事業が増えるほど経営できる人材も増える会社へ変わります。外部事業責任者を活用する本当の目的は、「社長の代わりに一つの事業をやってくれる人」を探すことではありません。「社長がいなければ事業が育たない会社」から「事業責任者が自ら考え、チームを動かし、売上と利益と顧客価値を作れる会社」へ変えることです。
そして、その事業責任者が外部であるか内部であるかは、最終的には手段にすぎません。本当に作るべきなのは、一人の優秀な事業責任者ではなく、社長の理想と原理原則を共有した複数の経営人材が、それぞれの事業を成長させ続けられる会社そのものです。



